『家族の舟』で学ぶペアトレ15のヒント〈15〉:「子供は、親を救うために生まれてくるのかもしれない」
「ちゃまっきーは俺を救うために、生まれてきてくれたのかもしれないな…」
——浩司のひとりごと【小説『家族の舟』より、最終章の夜】
■ 救われたのは、きっと親のほうだった
「ちゃまっきー」とは、主人公・浩司の娘・亜希のニックネームです。
自閉症で知的な遅れがあり、学校生活に馴染めず不登校になります。
浩司はうつ病で長く働けなかった。
家庭もうまくいかなかった。
子どもとどう関わればいいかも分からなかった。
そんな浩司の人生に、小さな転機が訪れたのは、「ちゃまっきー」と娘のあだ名を呼ぶようになった頃からでした。
障害がある。
学校に行けない。
将来が見えない。
以前の浩司なら、それを“問題”としか見られなかった。
しかしある夏を境に、その子の存在そのものが、自分を生かしてくれていると感じるようになるのです。
■ 子どもは、ただ「育てるもの」じゃない
ペアレント・トレーニングは、
子どもを変えるための“方法”という側面がある一方で、
”親自身が変わる”という側面もあります。
親が、子どもの行動に“まなざし”を向けることで、
自分の考え方が変わり、
家族との関係が変わり、
親自身の生き方が、少しずつほぐれていく──
この15話の連載で伝えたかったのは、まさにそのプロセスです。
■ 誰かを救おうとしなくていい。誰かに救われる瞬間が、もう起きている
浩司は、子どもを導く立場ではなく、
**子どもに導かれた“ふつうの父親”**でした。
「子育てがうまくいかない」
「何もできていない」
「イライラしてばかり」
そんなふうに思っていたあなたも、
気づかぬうちに、子どもと一緒に“舟を漕いで”いるのかもしれません。
■ ありがとう、ちゃまっきー。そして、ありがとう、私の子どもたちへ
このエッセイの読者であるあなたへ、
そして“誰かの親”であるすべての人へ、伝えたいのは、
子育てって、ただの育児じゃない。
それは、生きなおしであり、人生の再出発でもある。
そして時に、子どもが、親の人生を救う。
✍️しげのひとこと
「救われた」と感じたその瞬間に、あなたの家族の舟はきっと、力強く前へと動き出しています。
小説「家族の舟」 2025年9月15日発売
うつ病、不登校、家庭内暴力。
沈没しかけた家族に、一つの航路が生まれた。