ちょっとだけ、子育てが楽になる話。 第1話:内なる“狼男”との戦い

第1話:内なる“狼男”との戦い
小説「家族の舟」の作者しげが、この小説を書きながら学んだ子育てに関する気づきをお届けするコラムです。
浩司は再び新聞の社会面を開いた。そこに掲載された容疑者Zの顔写真と目があった。Zはぎこちない作り笑いを浮かべてこちらを見つめている。その眼差しは笑いながらも、どこか他人を拒むような不穏な光が潜んでいた。
小説『家族の舟』「プロローグ 2023年」 より
物語の冒頭。
主人公・浩司は、素直でかわいい娘に恵まれ、妻の職場では「理想の結婚相手」と称賛され、すっかり鼻の下を伸ばしています。
そんな中、新聞で“娘を虐待死させた容疑者Z”の記事を読み、一気に冷や水を浴びせられるような衝撃を受けます。
——「自分と容疑者Zは、似ているかもしれない」
少しネタバレになりますが、小説『家族の舟』は、一見すると障害のある小学生の次女・亜希の問題を解決していく物語に見えます。
しかし実は、父・浩司が自らの内に潜む“凶暴で残酷な狼男”と向き合い、それを乗り越えていく物語なのです。
障害がある子どもに問題があるのではなく、
「人と同じようにできない我が子」への苛立ちを抑えられず、暴言や暴力をふるってしまう親側の問題。
これは、障害の有無にかかわらず、多くの家庭で起こりうる課題です。
たとえば、わが子に勉強やスポーツで過剰な期待をかけたり、
「有名大学に行かせたい」「名門チームに入れたい」といった思いを押しつけてしまう――
そんな親子関係も、形を変えた“狼男との葛藤”かもしれません。
そして、浩司がその“内なる狼男”を乗り越える鍵となったのが、
ペアレント・トレーニング(応用行動分析)という手法でした。
果たして浩司は、“怒り”や“支配”ではなく、“信頼”や“つながり”を選ぶことができるのでしょうか?
その答えは、物語のラスト、エピローグで明かされます。
✍️しげのひとこと
「変わるべきなのは子どもじゃなく、自分だった」
……そう気づいたときから、全てが始まりました。
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