ちょっとだけ、子育てが楽になる話。 第2話:「やめられないゲーム」の奥にある気持ち

第2話:「やめられないゲーム」の奥にある気持ち

その朝、浩司は寝坊してしまった。

(中略)

前の晩、彼は「早く寝なければ」と思いながら、深夜三時まで眠れなかった。リメイク版のドラゴンクエストⅢが面白すぎてやめられなかったのだ。

小説「家族の舟」 第1章 2018年 父親失格より

 

第1章では、私自身の実体験をもとに、うつ病で無職だった頃の生活が描かれています。
当時、私は看護師として働く妻に代わって、一応、家事と育児を担っていました。正直に言えば「良い父親」とは程遠い存在でした。

一言で言えば、無責任で気楽な大学生のまま、40歳を過ぎてしまったような大人。
家事も育児も「最低限だけやればいい」と割り切り、あとはテレビゲームに没頭していました。とくにドラクエのようなRPGは、自分を“勇者”にしてくれる大切な逃げ場でした。

今、私は放課後等児童デイサービスで働いており、不登校のお子さんとご家族と関わることが多いのですが、そこでよく聞くのが「ゲームをやめられない」という悩みです。
夜遅くまでゲームをしてしまい、朝起きられず、学校に行けない——。
この話、かつての自分にそのまま当てはまります。

ゲームそのものが楽しい、というのはもちろんあるのですが、私の場合はそれ以上に「現実から目を背けたい」という思いが強かったんです。
どれだけ家事や育児を頑張っても、「無職」という現実は消えない。
そして、顔を合わせるたびにそれを責めてくる父親の存在が、さらに自分を追い詰めていました。

でも、ゲームの世界なら違います。
スイッチを入れた瞬間、自分は“勇者”になれる。
現実の自分を忘れ、力を取り戻せるような感覚がありました。

もしかすると、不登校でゲームに夢中になっているお子さんの中にも、私と同じような気持ちを抱えている方がいるかもしれません。

もしそうなら、ぜひ「ほめる」ことを試してみてください。
たとえ学校に行けていなくても、今その子が“できていること”を見つけて、褒めてあげてください。
ゲームの中ではなく、現実の中で、“あなたは立派な勇者なんだよ”と伝えてあげてください。

そして、学校に行けず悩んでいるご本人へ。
あなた自身も、「自分をほめる」ことを試してみてほしいのです。

うまくいかない毎日の中で、それでもちゃんと生きている。
そのことだけでも、本当にすごいことなんです。

「今日も一日、なんとかやりすごせた」
「家から出られなかったけど、ご飯はちゃんと食べた」
そんなふうに、小さなことでも“できたこと”を認めていくことで、
少しずつ、自分のことを好きになれるかもしれません。

そして、ある日ふと、こう思えるようになるかもしれません。
「私、意外と頑張ってるじゃん」って。

——その気づきがあれば、もう大丈夫。
きっとあなたは、少しずつでも変わっていけます。


 

✍️しげの一言

ゲームの中でしか勇者になれない日もある。
でも、今日を生き抜いたあなたは、もう立派な勇者です。


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