『家族の舟』で学ぶペアトレ15のヒント〈4〉大人にも“褒める”が心に届く瞬間

「ありがとう!」
美佳子はそう言って、浩司の方を振り返った。
「この家もう古いし、カビ汚れとか諦めてたけど、ちゃんとやれば綺麗になるのね」


■ 偶然きれいになった排水口、偶然じゃなかった言葉

このシーン、実は浩司が掃除したわけではない。
自殺のために排水口に流したハイターが、偶然汚れを落としたにすぎません。

でも、ここで注目したいのは、**美佳子の「ありがとう」**という言葉。

浩司にとって、これほどストレートな“感謝の言葉”を家族からかけられたのは、久しぶりでした。


■ 「ありがとう」は、褒め言葉より強い“つながりの言葉”

ペアレント・トレーニングでは「褒めること」が基本ですが、
実はその“最も純粋な形”が、**「ありがとう」**という言葉です。

  • 「すごいね!」よりも

  • 「助かるよ」よりも

「ありがとう」は、“あなたがそこにいてくれること自体が嬉しい”というサインなのです。


■ 行動の背景を知らなくても、「感謝」は届けられる

このシーンのように、たとえ相手の意図がどうであれ
「それによって助かった」「気持ちが軽くなった」と感じたなら、
素直に「ありがとう」と言っていいのだと思います。

その一言が、相手の“自分には価値がある”という感覚を育てます。


■ 家族の中に、「ありがとう」が飛び交う光景をつくる

家族だからこそ、感謝を口にするのが照れくさくなることもあります。
でも、それを乗り越えて言葉にできたとき、関係は少しずつ変わり始めます。

褒めようとして言葉を探さなくてもいい。
まずは、「ありがとう」から始めてみる。
それが、家族の再出発になるのかもしれません。


✍️しげのひとこと

「褒める」ってむずかしい。でも「ありがとう」なら、今すぐ言える。

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