今日は放課後、小学校の運動場で田中くんと遊んで遅くなってしまった。花壇の横にアリジゴクの巣を見つけたんだ。そこにアリを捕まえてきて入れたり、葉っぱの茎を突っ込んだりしているうちに、気がつくと校舎の大時計は5時を過ぎていた。
「やべ! 公文があるんだ!」
という田中くんと一緒に、小走りに校門を飛び出した。夕暮れ迫る通学路には、もう誰もいない。一つ目の角を曲がったところで、僕と田中くんは、
「ワッ!」
と言って立ち止まった。道にジャージの上下を着た男の人が、うつ伏せになって倒れているのだ。
田中くんは、
「死んでるのかな?」
と言った。僕は、
「いや、生きてるんじゃない?」
と言った。だって、微妙に背中が上下していたから、まだ息してると思ったんだ。怖かったけど、僕たちは確かめることにした。死んでるにしろ生きているにしろ、警察とか学校の先生とか、大人の人に知らせないといけない。
おじさん大丈夫? おじさん? おじさん?」
僕よりも明るく社交的な性格の田中くんが、声をかけた。すると次の瞬間、倒れていた人はガバッと起き上がり、
「おじさんじゃ、なーい!」
と叫んだ。
「ぎゃー!」
僕と田中くんはびっくりして逃げ出した。
頭がグリグリパーマで後ろからみるとおじさんのようだったけど、確かにお化粧もしていたし、あれはおじさんじゃなく、おばさんだった
「ダイエット中でお腹空いて気が遠くなって倒れちゃったの! あんたたち、何か食べるもの持ってなーい?!」
全速力で走りさる僕たちの後ろから、おばさんが叫んでいる。
「公文があるからー!」
「ごめんなさい!」
僕と田中くんは走り去った。