経営者におすすめの小説 『夜行観覧車』 湊かなえ・著
前回のブログで、
元日に実家でとっている某新聞の占いコーナーを見ますと、
6月生まれの私の今年の運勢は、「暗闇の中から、新しい価値観を見出す」とありました。
と書きました。
そして、マジで新年早々、闇と向き合わされる体験・第二弾がありましたので、
レポートさせていただきます。
我が娘よ…新年早々、ヘビィな本、読んどるじゃない…
正月の元旦と2日、我が家の長女(高2)が、
寿司だのすき焼きだののご馳走を賞味するのもそこそこに、
えらく熱心に、ある文庫本を読んでいるので、
「なに読んどるん? 読み終わったら貸して」
と頼みました。で、
「ええよ」
というわけで貸してもらったのが、こちら。
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湊かなえ著 「夜行観覧車」
いやー、INSIDEにつづき、新年早々の闇! 第二弾! でございました。
一晩で、一気読みしました。
「長時間、同じ姿勢で一点を凝視してはいけません」
と、通っている鍼灸の先生に注意されているのですが、
目が離せなかった!
おかげで、新年早々、肩と首がバキバキでございます。
「やるせねぇなぁ」と、思わずつぶやくストーリー
この「夜行観覧車」、どんなストーリーかと申しますと、
父親が被害者で、母親が加害者ーー。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と、向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。
(引用:文庫のカバーに載っていたあらすじより)
読後、私と長女の間で交わした感想は、
私 「…やるせねぇなぁ」(※筋肉少女帯「高円寺心中」の口調で)
長女 「…やるせないね〜」
新年早々、父と娘は、深いため息をついたのであります。
なにが欲しい? 学歴? 職業? 収入? ルックス? 家?
この作品には、様々な「持つ者」と「持たざる者」が出てきます。
「持たざる者」は「持つ者」を目指して努力します。
結果的に「持つ者」になったけど、逆にそれが不幸の呼び水になったり、
あるいは求めたが手に入らず、「持たざる者」のままで、
「持つ者」を妬み、僻み、卑屈になって性格が歪んだりします。
逆に「持つ者」がほんの小さなボタンの掛け違いで、
一瞬で全てを無くしてしまったり、
「持つ者」だと、みんなから羨ましがられていたのに、
実は、心の中にぽっかりと大きな穴を持っていたりします。
私を幸せにしてくれるものは一体…?
人は皆、幸せになるために生きています。
経営者も、幸せになるために会社を経営している。
でも、その「幸せ」って、なんなんでしょうね。
……ということを、考えさせられる作品でした。
経営者は、従業員や社外に対して、
なんらからの「価値観や理想」を示さないといけない存在です。
そして、そこに向かって従業員や家族を連れて、
進んでいかないといけない。
しかし時として、経営者が「正しい」と思っている価値観が、
従業員や家族、そして世の中の流れのそれとリンクしていないことがある。
大きなギャップが生じていることがあるんです。
そこに、摩擦が生まれ、問題やトラブルが生まれやすくなります。
そのギャップに気づかずに進んでいく経営者もいるし、
そのギャップに気づいているけど、あえて気づかないフリをしてすすむ経営者もいる。
あるいは、ギャップの大きさに途方に暮れて、足がすくんで立ち止まってしまう経営者もいます。(←西山はこうなりやすいタイプです)
そんな時は、こんな冷静さを持ちたいな…と、「夜行観覧車」を読んで思いました。
「自分は”何か”に囚われすぎていないか?」
「夜行観覧車」に出てくる登場人物は、
みんな「幸せ」を目指して必死に生きている。
でも、「何かが違う」んです。
この作品から得られる「モヤモヤ感」を解明することは、
一生かかっても無理だと思います。
しかし、一つだけ、肝に銘じたいのが、
「何かの価値観に囚われすぎて、
周囲の人と自分の間に、無用な摩擦を起こしていないか?」
と、”客観的になろうとする努力”をしよう、ということ。
「最近、どうも従業員や家族とソリが合わない」
という経営者さんに、おすすめの一冊です。
「夜行観覧車」に出てくる人は、みんな「いい人」なんです。
登場人物は、基本的に、みんな「いい人」です。
心根まで腐ったような悪人は、一人も出てこない。
だからこそ切ない。
「いい人」ゆえに、誰かのために頑張って、頑張りすぎて、
それが逆に周囲との摩擦を生み、
最後は、とんでもない結末を迎える…。
「ああ、やるせねぇなぁ…」
こんなやるせなさは、小説の中だけにしておきたいものです。ハイ。
というわけで、