(※このコラムは2004.3.14に書いたものを加筆訂正したものです)
先日、妻と生後10ヶ月になる娘を連れて、
あるレストランに行った時のことである。
隣の席では30歳前後のカップルが、
楽しそうに食事をしていた。
しばらくして、そのカップルの彼女の方が、
僕の娘を見つけて「かわいいね~」と、
手を振ってきた。
娘はそ知らぬ顔でパンにかじりついていたが、
僕が無理やり腕を取って、
その彼女に向かってバイバイをさせる。
娘は迷惑そうに僕の顔を見上げる。
彼の方は緩みきったしまりの無い顔で、
「ホント、かわいいね~」と相槌を打ちながら、
(いつか、僕たちも・・・ね♪)
と、彼女にラブラブなアイコンタクトを送った・・・ように見えた。
「ねえ、こないだ携帯電話で、
○○君(←2人の共通の友人らしい)の子供の写真、撮ったでしょ。
可愛かったよね~。あれ、見せてよ!」
飛び跳ねそうな勢いで彼女がいうと、
「ああ・・・いいよ」
彼は少し浮かない表情をしながらも、
ポケットから携帯電話を取り出した。
そして、机の下で操作をして、
手を伸ばして彼女に画面を見せた。
「きゃ~!カワイ~!」
彼女は黄色い声をあげて、
携帯電話を受け取ろうとするが、
彼は無言でスッと手を引っ込めて、
携帯電話をポケットに入れた。
その行動に「女の第六感」が働いたのだろう、
彼女の目が少し鋭くなった。
「・・・こないだ2人でドライブに行った時の写真も、見せてよ・・・」
「え・・・? も、もう、ないよ」
「なんでないのよ!」
「こないだ機種変更したから・・・」
「機種変更って、かなり前じゃないの!」
「・・・ないものは、ないんだよ・・・」
「ちょっと携帯、こっちに貸しなさいよ!」
「・・・いやだ!」
彼の携帯電話には、
彼女には見せられない写真かメールでも入っているのだろうか?
2人の間に、気まずい沈黙が流れる。
僕は立ち上がって、
「おじさんも携帯の中身が気になるから、
そして、それによって君たちの関係がどうなるのか、
とても気になるから、さっさと彼女に渡しなさい!」
と言いたかったが、言えなかった。
・・・っていうか、そんなこと言っちゃダメ、ゼッタイ。
結局、そのまま2人は一言も発しないまま、
出された食事を黙々と食べ、店を後にした。
あの後、あの2人はどうなったのだろうか。


